超域イノベーション・コア

btn-s_innovation-jissen

超域イノベーション総合

産官民の実践家とともに、多様な研究科から集まりチームとなった大学院生が現在の延長線上にはない未来を描き、未来に挑む。イノベーションチャレンジ。それが、「超域イノベーション総合」です。
課題設定・解決能力の修得を目指す、超域イノベーションコア科目の集大成プロジェクト。

 超域イノベーション博士課程プログラムでは、汎用力の基礎となる知識やスキルを身につけるための授業科目の他、課題設定・解決能力ならびにその実行・実装のための総合的な能力を修得するための超域イノベーションコア科目を開講しています。「超域イノベーション総合」は、その集大成となる長期のプロジェクト型授業です。

プロジェクト成果

Innovation_sogo_tab_off_2014
Innovation_sogo_tab_on_2015
Innovation_sogo_tab_off_2016
Innovation_sogo_tab_off_2018

過疎地域の将来を描く

課題提供:京都市右京区京北地域

 本チームの課題は、過疎指定地域である京北地域に対し、地域振興につながる空き家活用策を提案することでした。
 全国の状況を踏まえつつ地域特有の問題を明らかにするため、行政、NPO、住民等との意見交換を重ね、課題解決へ向けた提案を行いました。

チーム 京北: 活動概要&成果 
■ 空き家問題の背景にある複合要因

 まずは現場に足を運び、京北地域という場所とそこに住む人たちを知ることで、地域が置かれた現状を理解し、解決すべき課題を洗い出しました。空き家問題には、少子高齢化や都市への人口流出による地域の過疎化といったマクロな問題と、家の相続をめぐる所有者側の事情などミクロな問題が複合的に絡み合っており、これらの問題を一挙に解決することは非常に困難です。マクロな問題とミクロな問題の相互関係を明らかにすることで、空き家問題の全体像を描きながら課題解決の糸口を探っていきました。

■ 空き家活用の障壁となっている構造上の問題

 京北地域では現在、行政や自治振興会を主導に空き家活用が進められています。そこでは空き家所有者への連絡・交渉、住民への啓蒙活動といった取り組みがなされていますが、こうした取り組みが実際に効果を上げるためには、さまざまな構造上の問題をクリアする必要があります。たとえば、行政・住民間の対立構造はそうした問題の最たるものです。京都市との合併後、京北地域では住民の求めるサービスと行政の提供可能なサービスとの間に乖離が生まれ、そのことで行政に対する不信感が醸成されてきたことが、インタビュー調査から明らかになりました。こうした構造上避け難い不信感や対立があることで、行政や自治振興会主導の空き家活用策には住民からの十分な協力が得られていないのが実情です。その結果、空き家の数自体は増加傾向にあるにも関わらず、活用可能な空き家を確保するのが難しいという状況にあります。

■ 住民主体の空き家活用

 こうした状況の中、空き家活用を効果的に進めるためには、住民が当事者意識を持ち、主体的に動き出すことが必要不可欠です。そこで注目したのが、京北内で動き始めている住民主体の空き家活用です。本チームでは、黒田地区にある「おーらい黒田屋」の活動を例に住民主体の空き家活用について調査を進めました。地域の細やかな事情を把握している住民が活動主体となることで、空き家情報の把握や所有者との連絡が円滑になるだけでなく、地域のニーズに基づいた活用方法を探ることが可能となります。地域問題の当事者である住民が主体的に活動できる環境をつくるべきだという立場から、最終的には、①行政が住民主体の活動を支援する体制づくり、②住民主体の活動を継続させるための交流活動という、二段構えの提案に行き着きました。

■ 行政が住民主体の活動を支援する体制づくり

 京北地域で空き家活用を進めていくためには、現在並行して進められている行政主導の活動と住民主体の活動が有機的に連動することが重要です。そのためには、住民の中から生まれた活動を行政が支援する体制を確立する必要があります。これは〈地域のための〉施策が生まれる理想的なボトムアップ型の行政体制を確立すること意味しています。現在も住民の意見を反映するためのワークショップなど、ボトムアップ型の行政が試みられていますが、前述した行政・住民間の対立構造を踏まえると、両者の協働のためには、より抜本的な体制改革が必要になると考えられます。

■ 住民主体の活動を継続させるための交流活動

 今回、本チームは、行政が住民の活動を支援する方法のひとつとして、他地域との交流活動「ふるさと友達ネットワーク」を提案しました。住民は地域の将来への強い危機感から活動に携わっていますが、それが負担になりつつあることもわかってきました。このままでは住民の中に疲労感が蓄積し、活動が衰退する危険性があります。このような状況を踏まえて、本チームは、住民が継続的に活動できる仕組みをつくる必要性を認識しました。
 他地域との交流によって、住民は自分たちの活動に対する気づきや活動を評価する視点を獲得し、その結果、目的意識を持って活動を続けていくことが可能となります。そしてこの交流活動は、忌憚のない意見交換会や地元紹介など、住民が楽しさを実感できる内容となっています。この楽しさは住民の負担や疲労感を軽減し、活動意欲を維持するために重要な要素です。本提案は地域内の活動を展開・継続させる仕組みであり、また地域間の横の繋がりを充実させることも可能だと考えています。

innovation_sogo_2015_img01
----------------

次世代の環境教育を提案せよ

課題提供:NPO法人こども環境活動支援協会LEAF

 今回、本チームが取り組んだ課題は、西宮市の都市と隣接する里山を舞台として「持続可能な開発のための教育(ESD)」をより発展させることでした。
 持続可能な社会構築に向けた人材育成を行うための「次世代の環境教育」の具体案を提示しました。

チームLEAF: 活動概要&成果 
■ ESDの先駆的事例

 これまでの環境教育では環境保全という観点を強調したものが多くを占めていました。こうした限定的な「環境」という捉え方を拡張して提唱された「持続可能な開発のための教育(ESD)」への社会的関心も高まっていますが、具体的な実践策は十分に普及しているとは言いがたい状況にあります。
 NPO法人こども環境活動支援協会(LEAF)と大阪ガスエネルギー・文化研究所(CEL)が共同開発した実証実験プログラム『第一次産業を基盤とした次世代の総合的な生活力を育む学びの社会デザイン研究』は、ESDの教育観に則り、農・林・水産・消費の分野に関する活動を通じて、日本社会の持続可能性に寄与する人材育成を目的としたプログラムです。これは、「環境」という概念を拡張し、環境問題以外の様々な社会課題(少子高齢化、食料自給率etc.)をも視野に入れた先駆的な環境教育となっています。

■ 現場で活動に参加してこそ得られる情報

 チームの始動にあたり、環境教育やESDについての情報収集を行い、その後西宮市甲山の里山に何度も足を運びました。LEAFが実施する土作りや稲刈り、除草といった農業体験や、薪作りやナラ枯れ調査といった山の体験等に参加しました。文献調査では分からないことも多く、まさに「百聞は一見に如かず」でした。またLEAF職員の方々とも意見交換を重ね、提案へ向けての知見と刺激をいただきました。回を重ねるごとに新たな気付きがあり、それを持ち帰って話し合い、また文献調査をするというプロセスを繰り返しました。

■ 次世代環境教育プログラム「Deliziosa Pizza」

 本チームは次世代の環境教育プログラムとして「Deliziosa Pizza~世界一おいしいピザを作ろう~」を提案しました。本プログラムのコンセプトは、1年をかけて「世界一美味しいピザを、ゼロからつくる」に集約されます。大学生20名を対象とし、甲山で野菜、小麦などを作って、1年後にオリジナルのピザを作ることを目指します。自身で材料作りから計画し、「ピザをつくる」という目標に向けた様々な活動を行うことで、楽しみながら「物事を俯瞰して捉え、全体最適となる解決策を実行する力」が身に付くものとなっています。

■ 境界線を引き直す力

 「次世代の環境教育」に必要な要素について議論を重ねるにつれ、ひとつの「力」が浮かび上がってきました。それは「境界線を引き直す力」というものです。環境保全に限らず、少子高齢化、食料自給率の低下などの社会課題は「部分」を見ているだけでは解決できません。これらの課題は社会の変動とともに様々な要素が複雑に絡み合い、またその影響も広範に渡るようになってきています。こうした問題に対し、既存の境界線に沿って問題を切り分けるのではなく、全体を俯瞰して捉え、全体最適となる解決策を導き出し、実際に持続的な社会に向けた行動を起こすことが必要です。本チームはこのような力を総合して、「境界線を引き直す力」と定義しました。

■ 持続可能な社会へ向けて

 本プログラムを実施することで、自然と人間との関係を見つめ直すと共に農林水産業の大切さに気付き、「境界線を引き直す力」を身に付けた人材を社会に輩出していくことができれば、一人ひとりが人々や自然とのつながりのなかで豊かに生きていく持続可能な社会が作られていくのではないかと考えています。

innovation_sogo_2015_img02
----------------

超域イノベーション総合プロジェクト 2015年度を振り返って

■ キックオフ
img_sogo_2015_05-02

 課題提供機関と学生の初顔合わせです。NPO/自治体の概要、プロジェクトとして取組む課題とその背景についての説明を受けた後、課題提供機関との打ち合わせを行い、今後の方向性や予定を議論しました。

■ 進捗報告

 5月末、6月末には教員へ向けての進捗報告を行いました。教員からのフィードバックを受けて計画を修正するとともに、異なる課題に取り組む他チームの進捗を知ることでモチベーションが喚起されました。

■ ミニレクチャー

 プロジェクトの進行段階に合わせて、週に1回のペースで30分程度のレクチャーを受けました。レクチャーの中では教員から各段階に必要な考え方、手法等の補足が行われました。

■ 中間発表
innovation_sogo_arrow2

 7月中旬に課題提供機関であるNPO/自治体の関係者を招き、プロジェクトの進行度合いを報告しました。ここでは各チームが実施した調査の結果や定義した問題、解決策のプロトタイプを発表し、関係者からフィードバックをいただきました。いただいた意見をもとに方向性の修正および最終提案に向けた進行計画の調整を行いました。

img_sogo_2015_05-03
■ 進捗報告
innovation_sogo_arrow2
img_sogo_2015_05-04

 10月頭には再び教員に向けた進捗報告を行い、最終提案の素描を提示しました。プロジェクトの終結に向けて必要な事項の洗い出しを行いました。

■ 最終成果発表
innovation_sogo_arrow2
img_sogo_2015_05-05

 プロジェクトの集大成として課題提供機関の関係者を招き、最終的な提案内容の発表を行いました。これまでに学んだ知識・技術を駆使して行った6ヶ月に渡る調査と議論を通じて見えてきた課題の本質を明らかにし、新たな価値を創造するビジョンとそれを実現するための実行プランを提案しました。

■ ふりかえり

 プロジェクト終了後、6ヶ月間の活動を通して得たそれぞれの学びの振り返りと共有を行いました。また活動を行った現地へ訪問して多くの関係者へ提案内容の紹介を行い、広く意見をいただきました。

■充実したフィールドワーク、文献調査、プロトタイピング

 活動期間中は課題内容への理解を深めるため、文献調査とともに現地でのフィールドワークを行い、現地で行われている活動への参加やインタビュー等を実施しました。綿密な調査を通じて課題を問い直し、課題そのものだけでなくその背景へも洞察を深めました。教室に留まらないフィールドワーク、何度も繰り返した議論、アイデアのプロトタイピングを通じて問題の本質へアプローチする提案を目指しました。

img_sogo_2015_05-06
----------------

履修学生の声

京北

 今回、空き家という観点から過疎地域を調査する中で、空き家問題は単に空き家の利用方法だけを考えれば良いというものではなく、考えるべき指標が非常に多い複雑な社会問題であることを実感しました。そういった問題の解決のために、与えられた問題を巨視的な視点と微視的な視点に加えて、その中間的な視点でそれぞれ再定義しながら整理していくことが必要不可欠であると感じました。
(工学研究科 博士後期課程 1年)

 プロジェクトの活動期間中、現地を6回訪問し、地元の方や移住者の方にインタビューを行いました 。私の専門領域では、実験から得られた数値などのデータのみを扱うため、それぞれの人の京北に対する想いといった定量化が困難な情報を扱う経験は初めてでした。当初はそのことに戸惑いを覚えることもありましたが、普段扱っている情報とは異なる情報を扱いながら、半年間ひとつの課題とじっくり向き合った経験は、今後の専門研究を進める上でも思わぬところで活きてくると感じています。
(生命機能研究科 博士課程 1年)

LEAF

 当初は「環境」と一口で言えども、どこに焦点を当てて解決策を考えていくのか、異なる専門をもつメンバー間では重視したい点や、議論にずれが生じることも度々ありました。しかし、実際に現場に足を運ぶなかで次第に「現場」を軸足に据えて議論を組み立てていくように変化し、断片的であった議論がつながりながら進むようになりました。課題定義から提案の具体化までの一連の過程を経験するなかで得た学びは多大ですが、同時に半年間での限界を自覚したことも重要な学びです。研究・教育・社会の接合について深く考える貴重な機会となりました。
(人間科学研究科 博士後期課程 1年)

 いかにチームメンバーに最大限に知識・能力を発揮してもらうかが自分自身の課題でした。議論しやすい場を設定し、その各人の意見・アイデアだけでなく、各人の価値観・バックグラウンドに気づくこともできました。また、お互いの価値観の理解がチームメンバーへの信頼につながり、期限が厳しいなど困難な時もありましたが、最大限に能力を発揮できるチームになっていったと思います。その過程で、プロジェクトはリーダーが一人で創り出すものではなく、チームで創り上げていくものだと改めて気づかされました。
(工学研究科 博士後期課程 1年)

----------------

課題提供者の声

京都市左京区副区長・京北出張所長 片山博昭

 平成17年に京都市と合併した京北地域(旧京北町)は,合併後も人口減少,高齢化に歯止めがかからず,まさに日本の社会的課題の縮図ともいえる地域であり,複数の大学が京北を社会的課題の研究フィールドとして活動しています。中でも,超域イノベーションの皆様は,各研究分野での高い専門知識を持つ大学院生が,学問領域を超えて困難な課題に取組んでおられ,毎回,既存の枠組みに捉われない発想で,本質を鋭く突いた調査研究をされています。今後も,複雑な現代社会の課題に,未来志向で積極的に踏み込み,「超域力」を発揮されることを望みます。

NPO法人こども環境活動支援協会 LEAF 小川雅由

 今回のプロジェクトの良さは、現代社会における諸課題の解決に向け、複眼的・統合的な視座を持ち中長期的な視点でアプローチできる人材の育成につながると感じました。

----------------
■ 本プロジェクトについてのお問い合わせ 

企業、自治体、NPO、その他団体等からの連携のお問い合わせ、大学等からの後援・視察依頼等、
お気軽にお問い合わせください。
お名前、ご所属、連絡先を明記の上、お問い合わせフォームからご連絡ください。

宛先:超域イノベーション総合授業担当まで

※本ページに掲載している情報は、2016年1月時点のものです。また、掲載している情報の無断転載を禁じます。