TEXT BY 井上 裕毅
研究科:工学研究科
専攻:精密科学・応用物理学専攻
専門分野:バイオデバイス、バイオセンサー

協働の国~幸せの国ブータン


ブータンでの活動。

タイからインド経由でブータン王国のパロ空港に着陸。陸路首都ティンプーへ。その後プナカのロベサにて地元の大学生と近郊の村の調査に入る。調査のあとティンプーに立ち寄り、日本に帰る。

渡航前のブータン

ブータン王国の名前はメディアに注目された時に良く耳にしていました。その時はなんとなくGNH(国民総幸福量)があってみんなが幸せを感じている国という認識しかありませんでした。まさか自分が行くことになるとは夢にも思いませんでした。その後事前学習を経て、ブータンに抱いたイメージは、伝統と文化を重んじ、仏教を大切にしてみんなが幸せな国だと思いました。具体的にどのように幸せかはあまり考えず、単純に、広く仏教が浸透しているから幸せなのだと思っていました。

Interdependenceという言葉

ティンプーで、ブータンに大きく貢献した人にしか与えられないダショーの称号を持つ人物2人の講演を聞くことができました。二人の話には必ずInterdependenceという言葉がありました。そのままの意味だと相互依存になるのですが、それ以上に深い意味を込めているように感じられました。幸せはお互いの行動が干渉して発生するものだと感じました。この言葉に出会ったことにより、海外実習以降も、自分の行動が他人の幸せになり、自分の幸せは他人の行動からきているのではないかということを意識するようになりました。

農村でのフィールドワーク

農村では一家族のお宅を訪問して二日に渡り調査を行いました。初対面でも快く受け入れてくれて、どんな質問にも丁寧に答えてくれました。また、私たちのために農作業を休み、村の会議も欠席してできるだけ多くの家族を集めてくれました。毎日が大変な農作業なのに次の日も笑顔で迎えてくれました。途中、広場で楽しそうな声がしたので寄ってみると僧と村人がダーツのようなゲームで遊んでいて、その周りで家族がピクニックをしていました。彼等は快くゲームに参加させてくれました。家族と広場では短い間でしたが、お互い直接言葉は通じないのに一緒に笑い、楽しい時間を共有することができました。人が訪ねてくれることの嬉しさと人が集まることの楽しさを、家族と広場のみんなを見ていて感じました。農村でのフィールドワークを終え帰路に着くと遠くから歌声が聞こえました。隣の畑で十数人が集まって歌を歌いながら農作業をしていました。およそ150m離れたところから合いの手を入れると歌声が大きくなって返って来ました。近所の農家から人手を集めてお互いの労働を交換し合うLabor exchangeの最中でした。自分たちの仕事のために他人の仕事を助ける微笑ましい情景を見ることができました。ここで旅の初めにダショー達から聞いたInterdependenceを思い出しました。ブータンでの実習を通して、人々の幸せはお互いの関係性の上で成り立っているのを実感しました。また、今までとは違った視点で幸せの意味を考える刺激的な体験ができたと思います。