選抜特集アーカイブ

来たれ!6期生!

若手超域生が語る、超域での1年間

執筆・撮影:2016年度生 桐村 誠
インタビュイー:2016年度生 長尾 麻由季(言語文化研究科・言語社会専攻)
黒川 顕稔(工学研究科・マテリアル生産科学専攻)

取材日 2017年1月11日

 大阪大学超域イノベーション博士課程プログラムでは、現在6期生を募集しています。志望者の方々は、超域を通してどんな経験をして、何を学ぶことができるのか、気になるところだと思います。今回は2016年度から超域生となった5期生、言語文化研究科・言語社会専攻の長尾麻由季さんと工学研究科・マテリアル生産科学専攻の黒川顕稔くんに、超域での1年間を振り返っていただきました。

五期生が語るそれぞれの動機

桐村: まず動機から聞いていきたんだけど、 黒川はなぜ超域に入ったの?

黒川: 大学院に入るときに何か新しいことをしようと思ったのがきっかけ。それで、他のリーディングプログラムのインタラクティブ物質科学・カデットプログラム(以下、カデット)が気になって、ドクター進学を考えている友達と合同説明会に参加した。合同説明会では、カデットだけでなく他のプログラムの説明会もやっていて、その時、他のプログラムとあまりに毛色がちがったのが超域だったんだよね。海外もいけることも強く伝えられていたし。海外フィールド・スタディの説明をされたとき、めっちゃ面白そう!と思った(笑)。合同説明会のポスターセッションで超域のブースに行って、さらに興味が沸いたよ。

長尾: 超域に何か共感できるものがあったの?

黒川: いや、もっと単純な理由で、自分は面白そうと思ったら、止められないタイプの人だから、気付いたら超域を受けていたという感じ。ちょっとでも興味があったら動いてしまうんだよね、今まで自分はずっとそうしてきたから。

長尾: いま、黒川くんの話を聞いていて一つ思ったのは、海外に行けるところに魅力を感じたと言っていたけど、他のプログラムでも海外に行ける仕組みはあったよね?他のリーディングプログラムの中にも、海外インターンシップを推奨しているものとか、いっぱいあったと思うけど。そこにはどういう差異があったの?

黒川: 僕が思うに、研究で海外に行くというのは、超域じゃなくてもいける。けど、超域ではマーシャル諸島やスリランカとか、絶対に行かないようなところに行くでしょ?そういう国って、自分の中で機会を作ること自体が難しいし、そういう体験を提供してくれる場があることがそもそも珍しいことだと思ったし、魅力的に感じた。

長尾: 確かに研究に関してであれば、研究科で行こうと思えば行けるよね。

黒川: うん、超域では、そういった研究科ではカバーできない部分を補うことができる。あと、比較的自由に行きたいところを決めていける「グローバル・エクスプローラ」もすごく良いやん、てなった。

桐村: 黒川はそういうふうな「研究科ではいけない」海外に興味があったから、超域を受けたっていう感じ?

黒川: そうだね。でも海外というか、自分の知らない世界に行くっていうのが好きで、今まで関わってこなかったところ、それはもちろん海外っていうものもあるけれども、自分の知らない分野という点で、他の研究科の学生と一緒に活動するという点も魅力だった。

長尾: そういう様々な面で、自分の置かれている領域を超えるとういうのが、まず超域のコンセプトにあるけど、未知にアクセスできるというところは大きな魅力だよね。

桐村: じゃあ、次に長尾さんの志望動機はなんだったの?

長尾: 私は、アメリカ文学の研究を学部でしていて、自分の専門分野だけを深めていくうちに、どんどん内側にベクトルが向かっている気がして、そのうちに視野が狭まっていくように感じたの。まさに、超域の問題視している蛸壺化に気づいたというか。そういう状況に肌感覚として危機感を持っていたときに、ちょうど超域のことを知って、全く新しい環境に身を置くことで、自分の研究や将来のキャリアデザインに対して何か新しいアプローチを見出すことができるのではないかと考えたんだよね。
私の研究科からアプライできるリーディング大学院は超域と未来共生(未来共生イノベーター博士課程プログラム)があって、両方とも自分の研究に親和性があったし、外に視野を広げるという意味では両方とも理にかなっていた。ただ全ての研究科から学生が来る超域の方が、分野の多様性が大きいという点で、超域を選んでよかったと思ってる。

黒川: 超域の広がりはすごいよね。

長尾: だからこそ、視点が散漫してしまうというデメリットもあるかもしれないけど、逆に、超域の方がどの分野が自分の分野と接続され得るかっていう点で、自分では予測できない発見が生まれやすくなる。こんな分野全然知らなかった!とか、こんな視点持っていなかった!とか、そういう多様性から生まれる化学反応が超域の方が起こりやすいと思って。それに、そうやって、全く異なる専門知を持った人と協働して新しいことをするって、すごく面白いことやしね!

異分野間でのコミュニケーション

長尾: 超域に入って変わったなと思えるのは、自分の研究を説明する際にいかに言語化すべきかを考えるようになったことかな。自分の研究分野の中で、その意義を語る時よりも、超域とかもっと多様な専門分野の人々が集まる場で、自分の研究を説明するときに、どういう言葉遣いをしたら効果的かすごく考える。同じ研究の前提を共有していないから、それを踏まえた上でどのように説明したら伝わりやすいか、とか。

黒川: そうだね、共通の言語がないから、どういう風に自分の専門について語ったらいいのか、どういう風に伝えたら相手に響くのかっていうのを考える場になっている。そういう意味ですごい役に立っている。

長尾: そう、言葉遣いも違うし、考え方も違う。そもそも、専門用語ってすごく便利な言葉で、同じ専門分野の中ではピンポイントで表現できて共通理解が深まるけど、異分野の人と協働するというときには使えないんだよね。その専門用語を使わずに自分の伝えたいことを言語化できる能力ってすごく重要なスキルだし、社会に出てもそういう能力って必要なわけやん。自分の持っている前提や専門知識が他の人に通用することの方が実際は少ないわけだから、今そういう機会が与えられているのはすごくありがたいこと。

黒川: そうだね、ずっと研究科内にいると、そういう能力っていうのは身につかないし、そもそも気に掛けることすら少ないよね。

長尾: うん、超域に入ってよかったところは、他の同期や先輩方と、自分の専門について語る機会ができたこと。それと、研究のための研究というか、「研究とは何か」を問う学問に出会えて、自分の専門領域を俯瞰的に見る視点を得ることができたことかな。学問全体の中における自分の研究の立場や意義を考える機会は、研究科だけでは得られなかったと思う。というのも、もし思考が内向きで、自分の専門分野しか見えていなかったら、そういう考えには至らなかっただろうからね。他の学問がどういう学問なのかっていうのをおぼろげにでも理解したからこそ、自分の研究っていうのが、学問全体においてどこに位置しているのかっていうのが分かるようになっていくと思う。

黒川: 具体的に言うとどういうことがあったの?

長尾: エピソードとしては、「リサーチデザイン」の授業で他の超域生の専門分野についてプレゼンテーションを聞く機会があって、普段馴染みのない分野についても、自分の分野との比較の中で捉えることができて勉強になった。それに加えて、私も自分の研究について発表する機会があって、他分野の人でも理解できるように言語化するための訓練の場になった。私の発表を聞いて他の超域生がどのように考えたかフィードバックを得ることができて、そこで他分野から見て自分の分野がどのように映るかっていうのを知ることができた。学問領域による差異を確認できたのも貴重な学びだった。

黒川: たしかに、どこに重きを置いているかっていうのはすごい分かった。

桐村: どこに重きを置くっていうのは?

黒川: たとえば、うちの研究室は外とのつながりが強い、実学的な研究となることが多い。簡単に言うと「分からなかったことを分かるようにするっていうのに重きを置いている。それに対して、文学研究科とかって、真理の追究に重きを置く印象が強い。

長尾: 私も感じている部分は共通していて、例えば理工系で技術開発をしている人は、世の中のハード面を担っているよね。一方、私のいる人文系はソフト面を担っているわけであって、そもそも社会における役割や着目している側面が違う。だからこそ、対話がなかったら理解し合えない可能性もあって、相互に理解し合うために、いかに伝えるかが鍵になると思うんだよね。

黒川: 研究科の中ですごいと言われていることが、他に行ってもすごいのかっていうのが考えられる機会があるっていうことはうれしいことだよね。

問題を見つける、ゼロからのモノ作り

黒川: 僕が一番入ってよかったと思えたのは、課題解決入門のおもちゃ作りだった。モノづくりの授業は、ほかの学部出身の人と比較しても、学部の授業で経験していたし、実際に手を動かすこともあったけれど、それとプロセスが違う。専門の学科の授業はそもそも目的がはっきりしたものを作る。たとえば、僕が学部の頃にやったのは、決められた大きさの範囲で、できるだけたくさんおもりを乗せられる船を作ろうっていうのがコンセプトで、材料はストローと割り箸だけに限定されたモノづくり。それがスタートでそこからいろいろ改善していきましょうっていうやつだった。そもそも目的がはっきりしていて、載せられたらいいよっていうゴールも与えられるんだよね。

桐村: 少し超域のモノづくりと違うね。

黒川: そう、超域での課題解決入門っていうのは、社会にある問題の中で、フォーカスするものを決めてからモノを作る、という本当にゼロベースから活動が始まっている。そして企画から発注・製作・発表までやる。一貫して自分たちがやるっていうのがすごい面白かった。普通の工学部だったら、既存の技術とか自分たちの持っているスキルを使って、「これを使ってやりたいよねっていうスタートになる。それに対して、課題解決入門ではコンセプトから考える。しかも僕たちはそれに結構な時間を使った。今回は「動くおもちゃ作りだったんだけど、「子供にとってのおもちゃってなんだろう」っていう問いをまず考えて、その答えを違ったバックグラウンドの学生と集まって築きあげるっていうのが、とても良い経験だった。

長尾: 確かに、超域では、問題を見つけるっていうことから始まることが多いよね。その授業では、私はモノづくり自体が初めての経験だったけど、コンセプト作りでは貢献できたと思う。そういう風に、バックグラウンドの異なる人達と共同作業をする際に、自分に何ができるかを実感するための授業だったのかな?

黒川: そうだね。でもうちの班はがっつり誰かがこれをやるというより、みんなが一丸となってやる感じだったかな。話し合いをする中で、どんどん着眼点が移り変わっていったのが印象的だった。

長尾: 全く異なる専門性を持った人が集まっているから、それぞれの意見を机の上に全部ぶちまけた時に、その多様性でもって更に新しい思考が喚起されるよね。他の意見から刺激を受けて、更なる段階に進んでいくイメージ。

桐村: 超域の院生たちでグループワークをするっていうのが鍵になるのかな。

黒川: グループワークは、自分にとって何が得意で何が不得意なのかを知るいい機会になる。言い換えれば、どういう分野に向いているのかを考えることができる。それはこの授業だけじゃなく、ほとんどすべてのグループワークについても言えることだと思う。

長尾: グループワークの中で、自分の研究科を超えて、自分がどういう面で貢献できるのか、つまり自分の強みが何なのかを知るっていうのは、自分を客観的に評価できるということだけど、研究科だけでこれをするのはすごく難しい。異分野の範囲で、自分の専門性や資質をもって活躍できる機会を与えられて初めて、自分に対する理解が深まる気がする。

黒川: あと、超域ではプレゼンテーションをする機会がすごく多いよね。超域のプレゼンで心がけているのは、メモを書かないようにすることかな。

長尾: つまり自分の言葉で言語化するってこと。

黒川: そう、さっきの長尾さんの話と重なるところがあるけど、自分の研究科では、専門用語を使わないと難しいから、人の言葉を借りた発表になってしまう。その点超域では、他分野の人も聞くから、自分の言葉でプレゼンするようにしてる。結果的に、専門のほうで発表するときも、自分の発表ができるようになった。

選抜試験を振り替えって

黒川: 超域の授業は結構アクティブだよね。英語にしても、座学にしても。今思えば、その傾向は選抜試験にも当てはまるのかもしれない。

長尾: そうだね。超域では、発表したり、議論したりする場が多く与えられている。発表や議論をするためにはまず自分の考えや意見を持つことが不可欠だから、そのあたりも見られていたんじゃないかな。

黒川: うん、それと、その考えや意見を言語化する能力。これはさっき話してたこととも被るんだけど、共通の言語がないから、どうやって自分の意見を伝えるかも重要だったと思う。

長尾: 自分の立ち位置を明確にして言語化することで、相手に自分の意見を伝えるのもそうだけど、もっといえば、自分と異なる意見が存在する中でどう行動するのかを見られていたのかな、って今は思うよね。

黒川: 超域に限らず、これからの活動の中で、自分の意見を先に固めておいて、じゃあそれをも持ってチーム内でどのように貢献していくか。自分の意見は持っているんだけど、それに固執するんじゃなくて、他者の意見を聞いて一つの結論に昇華させていかないといけない。そこが要になるんだろうね。

1年間のプログラムの中で二人の超域生は研究科では得にくい視点・立ち位置を見定めており、今後も超域プログラムの中で精進していきます。この記事を読んで、一年間で二人が超域で得たものについて実感できたと思います。5期生を含め、超域生である私たちは6期生の皆さんをお待ちしております!

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