シンポジウムから学んだこと

~ディスカッションの準備・運営を通じて~

今回の経験を通じて、まず気付かされたのは、プロジェクトマネジメントにおけるメンバー間での 「Trust(信頼)」の重要性です。この「Trust(信頼)」は超域コンパスの中にも挙げられているキーワードです。

運営に携わった私たち3名の履修生は、それぞれ違う研究科に所属しているため、研究生活のリズムや忙しくなる時期も異なっています。そのため、滞りなくプロジェクトを進めるには、誰かに負担が集中しないよう、それぞれの特性を生かしながら役割分担を行うことの必要性を感じ、それぞれがその時々にできることを探し、率先して取り組む姿勢を示して活動を行いました。そのお陰で、メンバー間の信頼関係は早い段階で確実に構築されたと思います。

しかしながら、プロジェクトの進め方についてはいくつかの課題が残りました。

まず、登壇者に関する調査の段階で、各メンバーの担当を設けたことが裏目にでた点もありました。負担集中を避けるために役割分担を明確にしたのですが、チームの中で考えを共有する機会が少なくなり、全体の状況把握や共通認識にずれが生じることがあった点です。

さらに、それぞれが自分の役割を完璧にこなそうという考えが働き、質問や要求に対するレスポンスのタイミングが遅れがちになり、徐々に予定が後にずれていったことが多々ありました。反応がなければ相手も次のアクションの出し方が分からないため、まず何らかの意思表示をする必要があると気づいたのは、もうプロジェクト後半に差し掛かった頃でした。

また、そのような準備期間を経て迎えた当日のディスカッションの中では、自分たちが用意していた質問を投げかけるのに精いっぱいで、「準備したことを十分に発揮しなければならない」という自分たちだけの目線でディスカッションを捉えがちになりました。登壇者の方々からの発言を元に、「今ここでどんな質問ができるか?」を常に考えつつ、より興味深い議論へ導くために、流れを読んで発言を行うことが十分にできなかったと感じています。

もちろん、あらゆるシナリオを想定し、そのために必要な情報を収集するという事前準備は、なお一層必要であると思いますが、シナリオから外れて新しい議論に飛び込んでいくことも非常に大切であることを実感しました。

こうして、プロジェクトの準備・運営・開催の全体を通して私たちが得たことは、事前準備と臨機応変さのバランスです。

大学院での研究生活の中では、チームを組んで、プロジェクトマネジメントを実践する機会が頻繁にあるわけではありません。このように、達成しなければならない目的や期限、実行の機会が明らかなプロジェクトに対して自主的に取り組むことで、自分たちでも気づいていなかった強みと弱みや癖、それに対してチームの中でどうフォローしあってプロジェクト達成へ近づいていくか、それを、身をもって学ぶ機会となりました。

~私たちがこれからやるべきこと~

準備から本番を通じて、登壇者の方々について調べ、またお話を聞くことを通じて、多くの学びや気づきを得ました。

冨山さんはディスカッションの中で、現在の自分が「できること」「やりたいこと」「やらねばならないこと」を意識し、その三つが重なる場所で行動をするべきだ、とお話しくださいました。

多くの学生は自分の「やりたいこと」ばかりを考え、ほかの二つに関心を払うのを怠りがちといえます。この三つを意識することは、今後の自分の選択において大きなヒントとなるはずだ、と、私たちにとって大きな力となりました。

また中谷さんからは、自分が無知であることを素直に認め他者に教えを乞えること、「教えを乞う力」の重要性についてお話を頂きました。専門知識はさもすれば独善的な思考につながりかねないゆえに、この中谷さんのお話は特に印象的でした。

鈴木さんは、オーケストラの指揮者を例に、リーダーシップの在り方についてお話をしてください ました。指揮者は演奏者の特性を把握したうえで、タクトを振り全体に自分が何を表現したいのか、各々にどう演奏してほしいのかを伝えます。このことは私たち履修生自身が、今後リーダーシップを発揮する際にも重要な視点だと実感しました。

このように、経験に基づく登壇者3名の方々のお話は、いずれも印象的で考えさせられるものでした。それは登壇者の方々の「経験」こそが、我々履修生が持っていないものだからではないかと思います。

登壇者の皆様や、ご参加くださった方々からの応援や期待を力に、私たち履修生は今後ますます成長していかねばなりません。本物を経験するため、これから与えられる様々な場を自主的に活かし、また「挫折」を恐れずに、困難なことへ自らチャレンジし続けることを常に意識して「超域イノベーション博士課程プログラム」の活動に取り組み、自分の道を切り開いていきたいと思います。

03

1.はじめに   2.準備   3.本番   4.シンポジウムから学んだこと