サマースクール2014

Texted BY: 国際公共政策研究科 比較公共政策専攻 2014年度生 山並 千佳

 FullSizeRender大阪大学超域イノベーション博士課程プログラムでは、英語でのコミュニケーション能力の向上と他民族・多文化の中で異なる価値観をもつ人々と接し国際性を身につけることを目的として1年次の夏期休暇中にサマースクールプログラムを実施している。2014年8月7日から9月7日にかけて、オーストラリアのヴィクトリア州に位置する、総合大学であるモナシュ大学のキャンパスに通い、国籍・人種ともに多様なクラスメイトたちとIELTS対策を通じて英語運用能力を向上させるための授業に参加するとともに、超域プログラムの履修生のためにコーディネートされたWriting/Interview/Presentationの授業に参加した。また、滞在期間中はキャンパス近郊にホームステイし、言語はもちろん文化・人種など日本とは全く異なる環境の中で生活した。  このレポートの前半では、私(国際公共政策研究科 山並)が初めての海外生活、そして異なる文化的背景をもつクラスメイトとのディスカッションを通して発見した、海外で生活し活躍していくための条件について、後半部分では工学研究科の立山くんより、滞在中に行った現地NGO訪問プロジェクトについて紹介したい。

不安だった初の海外生活

私にとって、今回のメルボルン滞在は、生まれて初めての海外経験だった。  英語で日常会話をするのも初めてで、出発前は海外経験がないことへのコンプレックス、英語への苦手意識から、ステイファミリーとコミュニケーションがとれるのか、など不安なことがたくさんあった。しかし、滞在を終えてみると、出発前に思っていたよりも楽しく生活でき、ステイファミリーともとてもよい関係を築くことができたと思う。 ここで、不安でいっぱいだった本滞在が、なぜ充実したものとなったのかを、考察をしてみた。

●第一の発見:ステイファミリーの子どもたち:サラとジャックとの会話

IMG_2696  1ヵ月の滞在を振り返ってみると、滞在一週目にサラとの交流を通じて、最大の要因に気付くことが出来たのが大きかったと思う。  私のステイ先には小学生の双子がいて、私はいつも彼らに追い回されていた。二人ともとても活発で、特にサラは、私のことを気に入ってくれたのか、よくマシンガントークを仕掛けてきた。子どもに特有の話し方をし、まだ大人のように書いたり、スペルを綴ったりするのが苦手なようで、私はサラの言っていることをすべて聞き取ることができず理解できない内容が多かった。しかし、両親や兄弟とは言葉でちゃんとコミュニケーションをとっていた。子ども達がまだつたない英語を使っている姿やその話す英語を聞いていて、私は「完璧な英語」にこだわって不安になっていた自分の意地と思い込みに気づくことができた。

●第二の発見:とにかく話すことで分かった文化の違い

 文法・発音ともに完璧な英語を話さなくても意思の疎通はできる。聞いてさえもらえないなんてことは日常生活では無い、まずは話してみないと何も始まらないということに気がついてからは、覚悟を決め、積極的に英語を話すように心がけた。まずは、あらかじめスクリプトを用意し会話に臨むところから始めた。そうして話すうちに決まり文句を覚え、はっきりと自分の希望を示し、ときには断る方が好感をもたれるというコミュニケーションのコツや、立場によって車内での席が決まっていること等の日本と異なるマナーを学ぶことができ、またオーストラリア英語独特のスラングや言い回しに気づくことができるようになった。

 私はステイファミリーとのコミュニケーションを通じて、Japanese Englishであっても、伝えたいことを整理し、発言の量を増やすことによって意思疎通ができることを、実感した。この体験を通じて、英語を話すことに対する心的ハードルが下がったこと、英語を自分の言葉として話す感覚を掴めたことは、とてもよかったと思う。  しかし、英語を話すことに抵抗がなくなって二週間、私はシティキャンパスのクラスで二度目の壁に直面することになる。

ディスカッションとプレゼンテーションの授業にて

語学研修が行われるモナシュ大学のシティキャンパスでは、それぞれの英語力に応じて三期生はクラス分けされ、多様な国から来た学生約20人とともに授業を受けた。私のクラスにはベトナムやサウジアラビアからの学生達がおり、経済発展、多文化共生、技術革新など多様なトピックについて話し合った。

●第三の発見:合意形成の難しさ

sms2014_img03  ディスカッションではお互いの国の違いや考え方の違いに触れる機会が多くあった。例えば、「国が発展し豊かになるために必要なものは何か」というトピックについて、私は経済成長・インフラの整備をあげたのに対し、ベトナムの学生は貧困の削減、サウジアラビアの学生は女性の教育機会の拡充を挙げていた。結果として、「話し合う」ことはできたが、それぞれが発言して状況を共有するにとどまり、議論を深めてグループで「意見をまとめる」ことはうまくできなかったように思う。

 このような多様なバックグラウンドを持つ人たちとのディスカッションでは、主張を形成する根拠となる文化・宗教的な背景が違うため、各々の背景を共有していないと趣旨や発言の論理構造が掴みづらく、議論のアジェンダを設定することや議論を行うこと自体が難しいことを身を以て学んだ。

 ディスカッションに加えて苦労したのは、プレゼンテーションの準備だ。 「メルボルンでホットな都市政策について、賛成反対の立場から論じ紹介する」というテーマを与えられ、与えられた二時間の中で構想〜発表の用意をし、その日の内にクラス全体に向けてプレゼンテーションをしなければならなかった。

●第四の発見:発信力の重要性

 限られた時間内で構想から発表の用意をするディスカッションでは、私のゆっくりした英語はグループメンバーに遮られてしまう。一方で強い口調としっかりした英語による主張は、根拠が不明瞭であっても、他のメンバーに聞き入れられ、発表内容に反映されていく。このプレゼンテーションの準備に費やした二時間は、カレッジで過ごした時間の中で最も悔しいものとなった。海外で他の国の人々と対等にディスカッションをし、かつ結果を出していくためには、英語が話せるだけではダメで、英語を使って議論のイニシアチブをとり、相手を説得できるようにならなければならないのだ。海外で活躍するためには、ただ英語が話せるだけではなく「どのようにコミュニケーションを取るか」という発信力が問われると感じた。

これから

ホームステイやモナシュ大学での経験を通じて、わたしの英語への向き合い方は大きく変わった。英語を身につけるためには、話してみて失敗と成功を繰り返す中で自分のものにしていくしかないということ、英語を身に着ける必要性を強く実感した。 IMG_2861  また、モナシュ大学で出会ったクラスメイトとのディスカッションを通じて、海外で学ぶことや働くことへの興味や意欲が高まった。世界をフィールドに活躍するためには、発音やレトリックまだまだ磨くべきことがたくさんある。この滞在は私に、帰国後もさらなる英語学習を続けるための強い動機づけを与えてくれた。

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