授業名:2017年度サマースクール
担当教員:Brenes Ivan Martin
Texted by :人間科学研究科 長谷 一宏(2017年度生)

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渡航先:バンクーバー/カナダ
研修期間:2017年8月26日〜9月17日
研修先:ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia, 以下UBC)内にあるEnglish Language Institute(以下ELI)
※超域プログラム生及び各地から応募した学生との混合授業
滞在先:ELI指定の現地家庭にホームスティ
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 大阪大学超域イノベーション博士課程プログラムでは、英語でのコミュニケーション能力向上と、多民族・多文化の中で異なる価値観をもつ人々と接し、国際性を身につけることを目的として、1年次の夏季に集中語学研修(サマースクール)を実施しています。今回われわれ超域6期生(2017年度生)を主とした12名は、2017年8月26日から3週間、カナダはバンクーバー、ブリティッシュコロンビア大学で語学研修に参加しました。そこで感じたことを、語学学習とその他の印象に残ったことの2つに分け記述していきます。

1. 「語学が伸びない」への挑戦

◆海外語学短期留学では語学が伸びない?

「海外の語学学校では英語が伸びない」

 今夏に大学のプログラムでUBCの語学学校に行くという話をした際に友人から言われた言葉です。学生が大学の休暇期間内に1か月間ほど語学留学をするという話はよく耳にしてきました。しかしながら同時に、このような海外での短期語学留学に対し、語学力の向上を目的として渡航するのは無意味であるという言説もしばしば聞かれます。友人の意見を整理すると語学力の成長を目的とした海外短期留学に否定的な根拠は下記のようでした。

・(仮に学習環境が優れていたとしても)期間があまりに短い。

・学内では学生間でも英語での会話が義務付けられているが、未熟な者同士が話しても発音や文法の間違いがわからないので向上しない。それゆえリスニング力の向上にもならない。

・日本人大学生が多く、日本の大学でネイティブスピーカーの教師が英語の授業を行うのと変わりがない。それならば渡航の意味がなく他のこと(教材など)にお金を使ったほうがよい。

・授業が集団授業であり教員が全ての会話をチェックするのは無理である。1人1人に対する指導が行きわたらない。ならば渡航費用、受講費用を日本のマンツーマン型の語学学校に費やしたほうがよい。

・(上述の理由などから)語学力向上を目的とする者が集まらないことも多々ある。

 さて、これらを聞き、私は「なるほど」と納得してしまいました。友人の言説にあるよう、海外での短期語学留学が高コストの割に高い学習効果を生まないのであれば、国内での学習環境が充実すればするほどコストパフォーマンスに差が生まれてしまいます。それでは語学力の向上は諦め、多文化社会を体感するということに重きを置くのがよいのでしょうか。

バンクーバーのダウンタウンの中心地

◆語学力は伸びるのか

「よし。本当に語学力が伸びないのか本気で試してみよう」

 これが私の出した結論でした。せっかくの語学留学ならばやはり語学力の向上と異文化理解の双方に努めるべきです。両方を満たすことができて初めて「海外短期語学留学に来てよかった」と言えるのであり、否定的な意見に賛同する前に、自らが目標を立てて挑戦をしなければならないと思いました

 ELIでは午前の授業が9:00〜12:30、昼休みを挟み、午後が13:30〜16:00というタイムスケジュールでした。英語の苦手な私は英語に触れる機会を増やそうと思い、朝7時からカフェにて毎朝前日の内容の復習をするようにしました。また、スティ先での夕食は18時頃と比較的早かったため、夕食後は家族と可能な限り会話をしたり、自室で英語の本を読んだりと、英語に触れる時間に多くを費やしました。

 英語の学習において有効であったことは、教員が授業外の時間において丁寧に指導を行ってくれたことでした。1週間が経過した頃、自主学習の際に前日に考えたこと、気づいたことなどを日記のようなかたちで英語で書くようになりました。必然的に英語での表現が思いつかない機会が増え、授業後に教員に声をかけ、尋ねることが多くなりました。あっという間に滞在期間の3週間が終わってしまいましたが、非常に貴重な時間でした。

◆環境を活かすも殺すも自分次第

 私が授業後に教員に疑問点を尋ねるようになってわかったことですが、ある学生は自主的にライティングの添削を初日から毎日受けていました。授業内ではスピーキングに割かれる時間が多かったため、自らの欠点を補うためにライティングの指導を授業外に依頼していました。これを見て私は「初日から教員をもっと活用すべきだった。計画性がなかった」と反省しました。

 また、別の学生は滞在中に絶対に日本語を使わないという目標を掲げており、真摯に最後まで貫いていました。もちろん可能な限り英語を使おうと努力する学生は他にもいましたが、彼は休日に日本人同士で観光に行く際も英語を使用する、メールやネットで目を通す記事も英語に限定するなど徹底していました。

 その他にも学習効果を得ようとする者は皆それぞれ工夫をして能動的に行動をしているという点が印象的でした。

授業後、UBC敷地内にある海岸へ散歩

 結論としては、海外短期語学留学でも学習の成果を出すことは可能であると感じました。ただし、月並みな表現ですが本人の努力次第であるように思います。私が渡航前に指摘された語学学校の懸念点に関しては、当てはまる部分も多々感じたのが事実です。しかし、それを乗り越えようと与えられた環境を最大限に活用しようとすれば、十分な学習効果が得られるという実感を抱きました。もちろん、日本に帰国した後の学習の継続が重要なのは言うまでもありません。今回の機会を最大限に活かせるよう今後も学習に努めていきたいと思います。また、刺激を与えてくれた友人達のように、大学の環境を能動的に活用し、研究に取り組む必要性を強く感じています。

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