「国境を越える、自分を超える」

~加速するグローバル時代を活き抜く自己成長モデルとは~ 2012.7.19 第3回超域スクール @大阪大学豊中キャンパス ステューデントコモンズ _DSC0044 2012年7月19日、大阪大学豊中キャンパス ステューデントコモンズにて、コーディネーターに瀬戸山晃一大阪大学国際教育交流センター准教授と三田貴超域イノベーション博士課程プログラム特任講師を迎え、グループディスカッションを取り入れたワークショップ型のスクールとして「第3回超域スクール」が開催されました。 テーマは「国境を越える、自分を超える」~加速するグローバル時代を活き抜く自己成長モデルとは~。 超域イノベーション博士課程プログラム1期生4人を含む多くの阪大生や社会人の方が参加しての活発なグループディスカッションが行われました。

◆潜在的な能力を広げるための選択肢、 「超域プログラム」

瀬戸山晃一大阪大学国際教育交流センター准教授の「私は大阪大学で海外へ留学を希望する学生の相談に乗っていますが、交換留学などで長期留学経験をしている学生は、明らかに一般学生と違いがあります。海外留学を経験したことで自分が持っている能力を広げていけることを知っているんです。今回は、皆さんに“超域プログラム”の趣旨や考え方を超域スクールという場で体感してもらい、大学院へ進み“超域プラグラム”に挑戦するという選択肢があることを知ってもらいたいと思っています」という言葉で第3回超域スクールの幕が開きました。

◆“グローバル”とはマジックワード? 本当は意味を捉えづらい曖昧な言葉“グローバル”。

まず始めに、瀬戸山准教授から今回のスクールのテーマでもある「“グローバル”とは何か?イメージするものをカードに書き出してみてください」という問いかけがあり、参加者は個々で考えを書き出していきます。その後、超域プログラム1期生が1人づつ入った4つのグループに別れてディスカッションが行われ、グループごとにまとめられたワードや意見をもとにグループの代表者による全体での発表が行われました。“グローバル”からまずイメージするのは「旅」・「英語」・「国境を越えたコミュニケーションや情報、時間の共有ができるインターネット」などの身近でポジティブなワードから、「境界をなくすことによる価値の均一化」や「マイノリティの淘汰」というネガティブな意見も発表されました。また、「“グローバル”というワードは実はマジックワードじゃないか?本当は意味が捉えづらい曖昧な言葉である』という“グローバル”という言葉の存在自体に対しての問題提起的な意見もだされました。 これらの様々な意見を受けて、瀬戸山准教授から新たなテーマが与えられ、ワークショップは次のディスカッションへと進みます。

◆“グローバル”の負の側面。 グローバル化が生む新たなる問題。

「現在、グローバル化が進むことに伴い、かつてない様々な問題が起こっています。“グローバル”社会がもたらす負の部分や問題点をあげてみてください」という問いかけの後、三田特任講師から『グローバルという言葉は2面性を持ったもの。先ほどのディスカッションでの取りこぼしもあると思いますので、意識をして議論してください』というアドバイスを受け、学生たちは個々考えをカードに書き出し、先ほどと同様に活発なグループディスカッションが行われました。その後、グループの代表者が全体発表を行いました。 「感染症の流行」、「臓器売買」など多国間で深刻化している医療問題や「一極化することから生まれる先進国による主導権の集中」など世界権力を懸念した意見、「文化の優位性と衰退化からの格差」や「テロや戦争、そこからの経済のゆがみ」という連鎖的に起こる問題があがる中、「グローバル化すると単純に学ぶ言語が増える」という学生らしい意見も。発表後、海外経験が豊富な三田特任講師から、ディスカッションでも問題としてあがった文化的な問題を軸に、パラオの伝統文化の現状についての講義が行われました。

◆“グローバル化”がもたらした、 パラオが抱える伝統文化問題と健康問題。

三田特任講師が少年時代を過ごしたパラオ。そのパラオが現在抱える“グローバル化”がもたらしている問題を例にあげるにあたり、簡単にパラオという国の歴史的背景とパラオの伝統料理であるカニ料理やタロイモを使った料理、タピオカ(キャッサバ)のデザートなど、豊かな食文化が映像とともに紹介されました。その後、現在のパラオの学校給食と一般家庭で食されている料理の写真が映し出されると、その映像は、伝統の食文化の影をみることはできず、戦後に統治されたアメリカのライフスタイルがパラオの食文化に強く影響をもたらしていることを明らかにします。近代化、グローバル化により、パラオの人々は自給自足の生活から、教育を受け、勤めることで賃金を得るという資本主義的なライフスタイルへとシフトすることで伝統料理がほとんど作れなくなってきている現状が語られました。また、パラオの食文化の破綻に連鎖して起こっている問題にも言及。不規則・高カロリーな都市型の食生活により、多くの人々が生活習慣病を患い、その医療費負担により国家自体が破綻する恐れがあるということ。その対策として大統領が非常事態宣言を発令する事態にまで発展していることを説明しました。三田特任講師は「グローバル化がもたらしている問題の1つの例です。こういう機会に海外の現状を皆さんが学ぶことも必要なのではないかと…。実際に知るということも大切です」と、世界で今、“グローバル化”が引き起こしている問題に目を向ける大切さを説いて講義が終わりました。続いて、瀬戸山准教授のグローバル化から世界でも深刻な問題となっている「臓器売買」についての講義へと移ります。

◆“グローバル化”が進むことにより広がる深刻な問題。 日本も、問題起因となっている臓器売買。

日本での臓器移植法改正に伴い、東南アジアを巻き込みながら社会問題となっている臓器売買。日本では臓器売買が禁止されていることもあり、経済的に裕福な日本人が、発展途上の東南アジア諸国に出向き、移植用の臓器を大量に購入してしまうことで、臓器移植を必要としている現地の患者に供給ができなくなっているという現問題を紹介し、グローバル化において日本が起因している大きな問題を瀬戸山准教授が説明しました。「このような問題にどう対処し、どういう法で規制をするのか…。単純に法的規制を厳しくするだけでは問題はアンダーグランド化するだけで、解決には至らない。どのような法規制が有効なのか、波及効果も含めて検討しなければいけない。私は現在、京都大学の山中伸弥先生の再生医療研究、IPS細胞研究の倫理委員をやっています。そこにも同じような問題が起きています。日本で研究に対する法規制がされると、他国での研究がすごいスピードで進み、クローン人間の研究も実はどこかで行われているかもしれないわけです。実は医療に関わるグローバルな問題は非常に難しい。倫理的な判断ではなく、人々を良い方向へ導く制度のあり方や制度設計を国際的に考えていかないといけない時代に来ていると思います」と瀬戸山准教授が専門的に研究されているグローバルな医療の法規制を題材に問題提起をして講義が終わりました。超域プログラムの選考の際に課題としてあがった臓器売買の問題ということもあり参加者は講義をする瀬戸山准教授に真剣な眼差しと耳を傾けていました。その後、第3回超域スクールの最後のディスカッションテーマを瀬戸山准教授から与えられました。

◆日本が、企業が、世界が今求める“グローバルな人材”とは? 「自分を知る」ことが気持ちを外に向ける。

「日本政府はグローバルな人材育成に多額のお金をかけはじめました。今後、どのようなグローバル人材を育成すべきなのか、を学生の視点から考えてください。」という最後のテーマで本日最後のディスカッションを行います。「勇気」や「挑戦」といった行動起因となる素質や「“龍馬的な人”」と歴史上の人物に例えたもの、「“ノンアイデンティティー”、第三の視点を持つ人材」という多角的に見る事ができる視野が大切という意見などが発表されます。その後、超域プログラム1期生の4名からも発表。「自分自身を知っていること」という4名ともに共通したワードが上がり、『自分の核となる部分を知ることで、相手のことも理解し認めることができる』という考えに参加者全員が賛同し、終了しました。三田特任講師が「今日は普段考えないようなことを考えるきっかけになったのではないかと思います。今回のテーマには正解はありません。“グローバル人材”は、人とモノを繋げることができ、グローバル社会の多様性をしっかりと見極める力を持ってる人だと私は思います。ぜひ、その力を超域プログラムで獲得してほしい」と学生にメッセージを送りました。最後に瀬戸山准教授が「自分自身を知るというのは大切なこと。海外へ行ったことがある学生は自分を知って、常に意識が外に向っています。一般の学生とはそこが違う。日本政府が日本の学生たちの内向き志向に危機感を感じ約50億円を毎年投資する“グローバル人材育成事業”を秋からスタートします。海外留学の奨学金制度も充実しており、今がチャンス。超域プログラムは、海外へのチャンネルとグローバル人材育成を主体にしたカリキュラムを用意しています。ぜひ、興味を持ってチャレンジしてもらいたいと思います」と今回のスクールの感想と超域プログラムの魅力的な内容を紹介して、第3回の超域スクールは終了しました。 今回の超域スクールでは、昨今よく耳にする“グローバル”というワードを、プラスの側面やマイナスの側面など多角的な視点から見つめ、参加した学生たちが意見を活発に交換・共有するという有意義なスクールとなりました。 正にグローバルな人材を育成する「大阪大学超域イノベーション博士課程プログラム」に相応しい活発なディスカッション・講義のもとに、第3回超域スクールは幕を下ろしました。