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TEXT BY 佐藤 紗良
研究科:文学研究科
専攻:文化表現論専攻美学専修
専門分野:イスラム庭園

 私は3/14から3/31までフランス・スペイン・オランダを巡った。ヨーロッパで訪問した主な機関としてはUNESCO(フランス)、ルーヴル美術館(フランス)、グラナダ大学(スペイン)が挙げられる。自身の専攻は美学で研究テーマはイスラム庭園なので、研究の為に回る場所は自ずと美術館や大学、庭園になる。他の人から見れば観光に見える研究は客観的な考察が難しい。
 さて今回の欧州での一番の目玉はグラナダである。グラナダは私の研究の出発地点であり恐らく帰着地点であるからだ。グラナダ大学ではアルハンブラ宮殿の復旧作業に携わった薬草学の教授2人と意見交換をした。彼らの考え方は私にはとても興味深く、新しい切り口のヒントを得ることもできた。
 またこの時期は復活祭と重なっており、休業中の機関もあった。訪問できずに残念な思いをすることもあったが、今まで見たことがない復活祭の一連の行事をグラナダで見ることができたのは幸運だった。アルハンブラ宮殿からPuerta de las Granadas(ザクロ門)を通ってまっすぐに降りてきた道では市民たちが黒衣に身を包み蝋燭を灯して歩いている。キリスト像が乗った神輿のようなものを担いで歩く人々。あたかもテーマパークのパレードのように臨時見物席が組まれ、通行者用の通路が設けられている。私はホテルの窓からその華やかなパレードを眺めた。
 雨の多い滞在期間だった。雨の振る中を行列は進む。歌と音楽。蝋燭と香炉。雨など気にしない人々の熱気。研究機関の訪問も大事だが、このようにその土地の文化に触れることも大切にしたいと思った。特に宗教・文化・歴史と深く結びついた研究をしている私にとってこれはとても貴重な経験であった。グラナダの人々がどれ程深くキリスト教を信仰しているか。それはブータン人の仏教信仰ともつながるところがある。改めて自分は日本人だと感じると同時に感銘と共感を受ける。そのような文化に触れられることは異国研究の妙味でもある。
 ふと見上げると傘の洪水の上に虹が現れた。人種や思想は違っても同じ時刻、同じ虹を多くの人と共に見上げることができる。研究とは異なるところで思いがけないものを得ることができた瞬間だった。

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