TEXT BY 佐々木 周作
研究科:国際公共政策研究科
専攻:比較公共政策専攻
専門分野:オンライン寄付行動の実証分析

世界の市民社会 ―ヨーロッパの寄付文化・最新事情

概要

 2013年の3月14日から31日にかけて、ヨーロッパにおいて海外プレ・インターンシップを実施した。自身の研究テーマが「オンライン寄付行動の実証分析」であることから、寄付に関する研究を行っている大学等研究機関、寄付に関する統計情報を発表している公的機関、オンライン寄付手段を非営利組織に提供しているIT関連の民間企業を訪問し、4年次の本インターンシップを見据えて、友好的な関係を構築することを目的とした。

渡航前

 訪問先のアポイントメント交渉にあたっては、「訪問させてください/教えてください」という“お願い姿勢”では行わないという方針を採った。丸腰の依頼だと、忙しいからという理由で断られる可能性があると考えたからである。「私自身が既にオンライン寄付行動の研究を行っており、その分析結果を持参すること。そもそも本分野の研究蓄積は少ないので、私が持参する結果は訪問先にとってとても価値がある、かつ希少性の高い資料であること」を交渉文句に、メールを送った。結果として、訪問したいと考えていた13の機関からアポイントを取ることが出来た。
 資料を持参すると宣言したため、当然ながら渡航前に資料づくりをする必要があった。プレ・インターンシップの直前まで、海外フィールド・スタディでブータンを訪問していたため、資料づくりの時間、資料に掲載する分析を行う時間が非常に限られていたが、下の写真のような形態で何とか完成させることができた。記載内容には厳密な検証が必要な部分もあったが、訪問先との関係構築において、アイスブレイクのような存在になれば十分だと考えた。

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渡航後

 それぞれの訪問先での平均滞在時間は3時間程度であった。前半は、私が持参した資料を用いてプレゼンテーションを行い、それをもとに質疑応答を行った。後半は、私からヨーロッパ各国のオンライン寄付の現状について、質問を投げかけた。
 結果として、寄付文化が古くから根付くヨーロッパにおいても、オンライン寄付の現状が把握できる統計情報などは未整備であること、但し、オンライン寄付手段の重要性から、統計情報の整備や研究の蓄積を早急に進めていくべきだと認識されていることが分かった。そのため、粗い部分もあったが、私が研究成果を持参したことは大変歓迎された。

振返り

 今回、大学等研究機関、公的機関、民間企業の3領域から様々な機関・団体を訪問したが、中でもオンライン寄付手段を非営利組織に提供しているIT関連の民間企業である、英国のジャスト・ギビングへの訪問が最も印象的だ。2000年に設立されたジャスト・ギビングは、実務的な立場からオンライン寄付市場の発展に多大な貢献をしてきた。さらに近年では、学術的な貢献度も高めている。オンライン寄付行動を分析した先行研究には、ジャスト・ギビングが研究企画の主導権をとり、英国の大学を巻き込んで行っているものも多かった。研究は大学等研究機関が主導的に行うものとの先入観があった私にとっては、民間主導で始動しつつあるオンライン寄付研究の現状にとても感銘を受けた。
 今回のプレ・インターンシップを契機に、本インターンシップの実施を視野に入れた、友好的な関係が構築できたと考えている。日本にいる間も密に連絡を取り合い、関係を強化することで、価値高いインターンシップが実施できるよう計画的に動いて参りたい。

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