TEXT BY 金 泰広
研究科:理学研究科
専攻:物理学専攻
専門分野:原子核理論(強い相互作用の現象)

 3月13日から27日までの2週間、フィリピンをフィールドスタディした。7000を超える島々からなるフィリピンには、およそ1億の人々が暮らし、8割以上がカトリック教徒であった。この海外フィールドスタディでは、首都マニラとカモテツ島、そしてセブを訪問した。今回の訪問目的は、フィリピンという所謂発展途上国を文字通り体験する、とてもシンプルなものだった。マニラ滞在中には、360度何処を見渡してもビルが建築されている急発展する都市部に位置するアテネオ大学のMBAで地元の学生達と交流した。そしてまた、マニラから車で1〜2時間程しか離れていない農場も訪れて、農村の人々の生活を見学した。家族経営の農場は、ココヤシやバナナなどの熱帯植物に溢れていて、既存の農場のイメージからは遠くかけ離れていた。

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 カモテツ島は、リゾート開発された最も貧しい島と言われている。セブ島からフェリーで2時間揺られて到着した島は、電線が一本ないため空の景色が見慣れなかった。
 カモテツ島の生活を知る目的で、島の公衆衛生を担うヘルスセンターを訪れ、そして、リゾート開発の影響からか、そこそこの規模の市場も訪れた。ただインタビューをして、地元で採れた魚を食べた3日間で、大阪で過ごす雑多な日々とはかけ離れた世界があることを実感した。

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 最後に滞在することになったセブ島で、パリアンと呼ばれるフィリピン華僑の歴史を展示した博物館とサン・トニーニョ協会を訪れたことがとても印象に残った。フィリピン華僑の歴史は商人の歴史であり、そこには同じく海を渡って来たイエズス会といったキリスト教の歴史も展示されていた。またサン・トニーニョ協会は、礼拝に訪れた信者の人々で大混雑していた。セブ島にいる間、人々が信仰を持っていることが目に見える世界をあまりにも素直に受け入れることができた。現地の生活様式を受け入れることで、意識することすらなく他者の信条を認められることの体験が、とても印象的であった。