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TEXT BY 冨田 耕平
研究科:医学系研究科
専攻:保健学(看護)専攻
専門分野:基礎看護学(看護技術、看護管理、マネジメント)

 フィールドスタディとしてニュージーランドのオークランド、クック諸島のラロトンガ島、マンガイア島を訪れました。
 オークランドとラロトンガ島では現地の方へのインタビューやマオリ文化に関連した施設を訪問し、マンガイア島ではホームステイをさせて頂き、現地の方と島での生活を共にしました。
 クック諸島での体験は感動と驚きの連続で二度と忘れることはできないものとなりました。それらを表現するには言語ではあまりに不十分で、すべてをここに記すことは非常に難しいほどに充実し、私の心を大きく揺さぶった滞在でした。

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 ラロトンガ島はオークランドからジェット機で約3時間の場所に位置し、クック諸島の主要な島で、公機関があり、観光客も多く訪れる島です。島を車で移動すると1周するのに1時間も要さないほどの大きさですが、レストランやスーパーやお土産を買えるショップなども多くありました。それでも日本ともオークランドとも比較できないほどの都市の規模です。
 ラロトンガ島からさらに50分ほどセスナ機で移動したところにマンガイア島はあります。マンガイア島にはラロトンガからの飛行機が週3回発着し、観光客が訪れることはほとんどありません。1周30kmほどの大きさで舗装された道などありませんし、飛行機の滑走路も白い砂利です。私がマンガイア島に到着した時の印象では、ラロトンガ島が大都会に思え、ホームステイを乗り切ることができるか不安でいっぱいでした。
 マンガイア島に到着するとすぐ学校に向かいました。日本で言うと幼稚園から高校生ぐらいまでの年齢の子供たちが通う学校で、今回ホームステイさせて頂いた家族も学校関係者の方でした。学校ではマオリの伝統的な踊りや歌で盛大な歓迎会をしてくださり、それが終わるとホームステイ先のホストブラザーとステイ先に向かいました。クック諸島に訪れた超域生は6人でしたが、それぞれ違う家族のところに訪問していたため、彼らへの挨拶もそこそこに三々五々に学校を後にし、ホームステイが始まったのでした。
 ステイ先には7歳と10歳のホストブラザーがおり、私が帰るとすぐに釣りに行こうと言われました。釣りが主な遊びの1つなのです。マンガイア島は海岸から60mほど珊瑚礁が続き膝下ほどの深さしかありません。その先は突然深くなり、太平洋に面している珊瑚礁の先まで歩いて行き、そこで釣りをするのです。私たちだけでなく人が釣りをしています。釣りの経験もほとんどなければ、そんな場所に行ったこともありません。時折、さらわれそうになるほどの高さの波が来ることもありましたが、子供たちはその波を読み警告してくれます。この瞬間、私などよりも子供たちの方がずっと頼りになり、命を彼らに預けているような状況でした。
 最初の印象ではラロトンガ島が都会に思えるほどでしたが、いざ生活してみると電気もインターネットも携帯電話もあり、世界からの情報伝達の速さは日本と同じです。特に印象的だったのは人の暖かさでした。ステイ先では本当に親切にもてなしてくださり、それは私がゲストであるからだとも思いましたが、住民同士でもお互いを尊重して扱っていました。島がそれほど大きくないということもありますが、ほぼ全員がお互いに顔見知りであり、また我々が滞在していることを全島民が知っていたこともあって、誰かに会えば必ず挨拶するような環境で、これは本当に心地よいものでした。

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 島での経験と感想をすべて言語化することはできません。海外に行き様々な体験をした人たちはよく、物事の考え方が変わった、新たな価値観を得ることができた、などと言います。私もその通りだと思います。自分の経験を伝えるためにいろいろな表現を考えていないわけではありませんが、なぜこのような言葉に終始するのかというと、言葉として詳細に説明しようとするほどそれが陳腐なものに思えてくるのです。クック諸島について調べると島の様子や言語や文化などを知ることができると思います。しかし、島で暮らすということがどういうことなのか、現在の「人」についての本当のところは理解することはできません。実際に行ってみなければわからないことばかりなのだと思いました。
 しかしこれは島での経験を語ることを放棄するということではありません。当然言語化した説明と共有もしていかなければならないと思いますし、私のこれからの活動がクック諸島での経験に影響を受けたものであり、それを体現したものになると思います。