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■茶園担当
  Texted BY 工学研究科 精密科学・応用物理学専攻 修士一年 樋口 舞衣

  モラトゥワでのホームステイを終えた後、ホストファミリーと別れハプタレーという町に移動した。ハプタレーは茶畑で有名な町であり、標高1400m と高い場所に位置するため肌寒かった。ハプタレー2 日目に私たちはグリーンフィールド農園という茶畑とそこに併設されている工場を訪れた。農園内では家が無料で提供され、学校、病院などの公共機関も全て無料で利用できる。これは一見、最低限の生活が保障されていて悪くない生活のようにも思われる。

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  しかし、実態としては低賃金労働で囲い込みのような状態になっており、多くの場合、農園で産まれた人は農園でしか生きられない。聞き取り調査時に私たちが質問を投げかけると、茶畑で働くお母さんたちはニコっと笑顔で快く答えてくれた。「この仕事があるときは良い。この仕事はまだマシな方。」と話してくれたのは、3 人の子どもを育てながら働いているお母さん。少ない賃金を切り詰め貯金をして、子どもを大学へ行かせようとしているそうだ。あとから聞いた話だが、ここ最近、茶畑併設の工場がまったく稼働していないとのことだった。それには茶畑で働くお母さんたちも気付いており、「あの工場がこのまま動かなかったら私たちの仕事はなくなる。」と不安をこぼしていたそうだ。プランテーションで働くお母さんたちにとって、低賃金労働や搾取、囲い込みよりももっと避けたいことは、仕事がなくなることなのだということをひしひしと感じた。

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■幼稚園担当
  Texted BY 生命機能研究科 生命機能専攻 修士一年 鵜飼 洋史

sIMGP3683  2月26日にハプタレーの公立幼稚園を訪問した。この幼稚園では、シンハラ、タミル、ムスリム系の子どもたちが在籍しており、シンハラ語、タミル語の両方で授業が行われているということで珍しいとの説明を受けた。現在、スリランカの一般的な幼稚園では英語が使われるのが主流になっている。スリランカでは 高等教育の発展に伴い幼少期からの英語教育が欠かすことのできないものとなってきている。しかし、幼少時代に自分の国の習慣や文化を自分の母語で教育されるということは、言語によって伝えたいことのニュアンスが変化してしまうということを、最近痛感している自分としてはこのような幼稚園が少なくなり英語での教育をすることには負の面もあると感じる。

  訪問時には、市長や副市長も駆けつけて下さった。副市長との会話の中で、スリランカの教育はすべて無料であると自慢げにうれしそうに話していたのが印象的であり、教育を良くすることの重要性を理解されていることも伝わってきた。また、交流会では園児が歌を披露してくれ、私たちも歌、けん玉、おりがみを披露し楽しい時間を過ごした。今回、ハプタレー幼稚園を訪問させていただき、幼少期からの民族、宗教、言語を超えての教育というものは子どもたちの多様性に対する相互理解や寛容性を 養うことの可能性、またその成長を近くで見守る先生、保護者、地域のコミュニティの人も気づかされることがあるのではないだろうかと感じることのできる良い機会であった。

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■大学担当
  Texted BY 人間科学研究科 教育環境学専攻 修士一年 金南 咲季

  最終日に訪れたペラデニア大学では、農学部を中心とする現地学生と共に「スリランカにおける農業の今日的課題」についての講義を受けた後、私たちが、2週間の活動を通して感じ学んだことについての発表を行った。概要としては、

1. 私たちの立ち位置ゆえに相対化して感じることのできたスリランカの魅力
2. マーケティングやブランディングなど「付加価値の創造」という観点から比較した両国の茶産業の実態
3. 高等教育の「不足」と「大衆化」という違いから考察した、両国の今後の教育的課題

の3つのテーマを中心に議論を行った。現地学生の多くは、生活レベルで起こっている農業問題を いかに解決していくかといった研究テーマを扱っており、私自身は、現場に知見を還元していこうとする彼らの姿勢や志向性に刺激を受けた。発表の最後には、本プログラムの紹介や今後必要となる博士人材像についても説明を行い、その後、活発な質疑応答の時間を持つことができた。

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  グローバルとローカルが相互に交わり合う混沌とした社会的問題を、国や組織、分野を越えた「協働」を通じてどのように解決していくのか。その発想やスキルを備えた次世代を育成することは両国にとって重要な課題となっている。今回の現地学生との交流は、草の根的ではあるが双方に多くの気づきを与え、異領域間をつなぐ「協働」 を学ぶための貴重な機会になったように思う。