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vol.2

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手探りでスタート

 超域イノベーション博士課程プログラムの学生には自ら企画を立案する機会が与えられ、それが承認されると、企画実現のため学生を支援する体制が整っている。本企画はその制度を利用して行われたものである。企画の運営はすべて発案した学生に委ねられるため、どのようなプロセスを経て進めるかは自分たちの自由にできる反面、それだけの責任があった。まずは訪問調査に向け、書籍やインターネットを通じた多様な情報媒体からファブラボについて理解を深める必要性があったため、手分けをして文献調査をすることで、ファブラボに関するこれまでの歴史と現状を把握した。そして、そもそもこの企画で達成したいゴールは何か、ゴール達成のために現地視察で何を聞き何をするかについて、幾度となく打ち合わせを行い議論を重ねていった。その際、ファブラボに焦点をあてた文献の調査だけではなく、モノづくりの歴史にも注目し、現在のモノづくりの中でファブラボがどのような役割を果たしていくかを把握できるよう心がけた。

順調に進んでいくように見えたが

 企画書を提出した後、約10名の先生に対してプレゼンがある。相手は様々な分野の教授たちであり、錚々たるメンバーであった。形式は約20分のプレゼンの後、約40分の質疑応答であり、この企画の背景と目的、具体的な活動計画の説明が求められた。我々は長い時間をかけて準備をしたつもりであったが、論理構成の甘さ、現状の調査不足をかなり指摘され、企画の承認をいただくことができなかった。チームは意気消沈したが、なんとか企画の承認を得て予算をつけてもらうことができた。

この時、武居弘泰は…

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 ゼロから企画を立ち上げ運営するため、課題設定力、プロジェクトマネジメント力、実行力が必要となります。また、先生方が本気で私たちのプレゼンを聞き指摘して頂けるので、プレゼンテーションのスキルと論理的思考力を磨く良い機会となったことは間違いありません。本業の研究との両立は大変苦しかったですが、この経験は今後研究を含めいろいろな活動の中で必ず生きてくるものだと感じました。

年末年始も事前調査

 しかし、企画申請の承認が12月末、そして訪問調査は1月13日と迫っており、すでに時間が無かった。その間、メンバーが学会発表、実験、研究調査で交代に大阪から離れ、さらに所属キャンパスが異なるため、全員が直接出席するミーティングを設けることは困難だった。週に2回程度ミーティングを設けていたが、参加できないメンバーは、オンライン通話で出席し、また参加できなかった場合はSNSでの議事録の共有を通してフィードバックと進捗状況の確認を行った。同時並行で、訪問先へのアポイントメント取りも行った。訪問先の候補であった数カ所のファブラボにメールを送り、コンタクトをとった。しかし、営業日が限られていたことや、学生の講義や研究活動との兼ね合いから、すべてのファブラボに訪問することは出来なくなった。最終的に、2箇所のファブラボと調査のアポイントメントと取り付ける事ができた。一つは、国内2箇所目のファブラボであり、電子工作に特化しておりカフェを併設しているという特徴を持つFabLab(ファブラボ)つくばであり、もう一つは渋谷に位置し、企業向けの契約も積極的に行っていこうとしているFabLab 渋谷であった。

現地視察・インタビュー本番

 事前調査の後、具体的に訪問当日に向けて疑問や知りたいことをあげ、それがどんな仮説から導きだされているのか分析した。さらに、質問事項を質問の深さに応じて並べ、仮説や訪問調査でどこに焦点を当て質問を行うのか議論を深めていった。最終的に、今回の訪問調査で探るべきリサーチクエスションは内容ごとに大きく3つに分けることができた。

1. いろんな人が集まってモノづくりをすることはよいことなのか
2. FabLabは地域活性化に役だっているのか、
3. 運営者はファブラボが今後どのように発展してくと考えているのか 

リサーチクエスションに基づいて、以下のさらに具体的な調査目的を設定した。

1. 利用の現状を経営者および、来客者への参与観察により知る。
2. 地域社会の連携の実情を経営者へのインタビューから
  具体的な事例にも基づいて知る。
3. ファブラボの経営者の考えるファブラボの理念と、
  設立の経緯、今後の展望を知る。

 最終的な質問事項のまとめは、訪問調査前日深夜のミーティングと、当日の新幹線の中での時間を用いてブラッシュアップを行った。当日の新幹線の中では、現地で得なければならない情報に漏れがないか最終確認を行った。訪問直前のミーティングは、訪問調査への緊張感と好奇心であふれ、地に足がつかないような感覚があった。

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現地視察・インタビュー本番

 予定では、2カ所のファブラボを訪問する予定であったが、急遽一件がキャンセルとなり、筑波市に位置し、カフェと一体で運営されているファブラボであるFabLab つくば のみの訪問調査へ変更となった。運営者である相部範之氏に対して、事前に作成した質問表を用いて5人でインタビューを行い、他の来客者と同様に過ごしながら施設内及び施設利用者の利用状況について観察した。

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