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授業名:システム思考
担当教員:藤田 喜久雄(工学研究科)
     山崎 吾郎(COデザインセンター)
     大谷 洋介(未来戦略機構)
Texted BY:工学研究科 2016年度生 河江 美里

 今回は、超域のコア科目である「システム思考」という授業についてレポートさせていただきます。具体的な活動内容については、すでにこのチョウイキジジョウ教員レポートにおいて記事になっているので、そちらをご覧頂ければと思います。このレポートを執筆している2016年12月現在、私は大阪大学大学院を休学し、イギリスの大学院にて勉強しているため、実際に授業を受けた時からタイムラグがありますが、改めて「システム思考」とは何だったのだろうということを整理しながら書いていきたいと思います。

 この授業は、超域プログラムの核ともなっている「俯瞰力」を養うために構成された授業で、誤解を恐れず言ってみると、研究科で研究している狭く深いエリアから顔を上げて、世界の複雑な問題を一歩離れた位置から観察してみようと突然外に放り出されるような印象です。ただし、一歩離れたからと言って全体像が見えるほど、世の中そんなに簡潔な仕組みになっていないということを実感した授業でもあります。

■まず、「俯瞰力」とは何なのか。

 「俯瞰力」とは、自分の周辺だけでなく、今フィールドで起こっていることを適切に把握する能力であり、周りを先導していくリーダーが次の行動を決定する際に欠かせないものだと私は考えます。

 私が小さい時からやっているバスケットボールに喩えて簡単に説明したいと思います。司令塔であるポジションに立つ人間は、自分がプレイすると同時に自分の周りで何が起こるかを予測し、次のプレイを選択しなければいけません。少し慣れてくると、自分の味方の特性がだんだんわかってきて、次はこういう風に動くだろうと予測することは決して難しくありませんが、それに加えて今会ったばかりの対戦相手の動きを予測することができなければ、一流の選手とは言えないと私は思っています。言わば、司令塔であるポジションの人間は同じコート内にいるプレイヤーがお互いどのように干渉しあいながら動いているのかを一瞬で見極める必要があるのです。このコート全体の状況を一度に掴む力を「俯瞰力」と例える事ができます。

 これは、他のチームスポーツにも言えることだと思います。そして、スポーツに限らず、社会の中で先頭に立って世の中を率いていく人たちは、現状で何が起こっているのかを把握して、適切に予測し、次のアクションを起こす必要があります。さて、社会全体を見ようとすると、どれだけ引いたところから観察しなければいけないのかということになります。ただ、引きすぎると今度は各所で実際に起こっていることが見えなくなるので、その引き具合を決めるのは難しいところですが…

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■では、どうやって今起こっている事象を把握するのか。

 一つの手段となるのが、授業のタイトルともなっている「システム思考」です。何か物事が発生する時、そこには何かしらの理由が存在します。その時に原因と結果が一対一で対応していれば簡単に結果を予測する事ができる、または原因を突き止める事ができます。けれども、10の要因が重なりあい1の結果になるとすると、一見しただけでは複雑で、なぜその結果になったのかわかりません。では、どのように紐解いていくのか。この思考法では、詳細な要因同士をお互い関連づけて大きな一連の塊として捉えようというのです。この大きなくくりのことをシステムと呼びます。

 再び、バスケで喩え話をしましょう。得点あるいは失点という一つの「結果」は単一の原因では説明できません。なぜなら、コートには敵味方あわせて10人のプレイヤーがいて、全員が同時に違う動きをしているからです。コートで起こっていることを把握するとなると、まず誰かがボールを持っていて、その人がゴールに向かう動きを阻止するためにディフェンスする(守備をする)人がいます。そして、ボールを次にもらおうとする味方がいて、もちろんその人をディフェンスする人もいるわけです。今の段階でも登場人物は4人。この人たちを1人ずつ見て、それぞれが自分にどのような影響を与えるだろうかと考えていると、次のプレイを決める頃には状況は変わっているでしょう。加えて、はたまた少し離れたところでは味方が…というようにコート上には、自分以外に9人いるわけです。では、コート全体を見てこの9人をそれぞれ関連づけて考えてみます。ディフェンスをする人は、自分の守っている相手の動きとリンクさせることができ、また、味方同士も、あの人があそこに動けば、今度は別の人がその空いた場所に動くだろうと関連づけることができるわけです。このように、一人一人のプレイヤーにフォーカスするのではなく、広くコート全体を見渡してみると、全員が連動して動いているように見えるのです。

 言われてみると、当たり前のことのように思いますが、このようにそれぞれの細かい要素を関連づけて大きな塊として捉えるというのがまさにシステム思考なのです。そして、このシステム思考の醍醐味は、今起きている事象をシステムとして捉え、ある問題に対して解決策を導き出すために、そのシステムのどこにメスを入れれば解決へ繋がるのかと検討することができる点です。

■いざ、これを社会に当てはめて考えてみると

 社会において考えてみると、登場人物はざっと何万人というところでしょうか。個々人の動きを観察して次の政策決定をしていれば、きっと何十年遅れということになるでしょう。ここでも、同じようにそれぞれを関連づけて考えていく必要があります。しかし、対象が広くなればなるほど、先ほどと同様にすべての要因をつなぎ合わせていると莫大な時間がかかってしまうので、要素の中でもさらに重要なものだけを抽出する必要があります。シンプルに考えれば汎用性は乏しくなるかもしれません。ただ、全体を把握するために一度単純な仕組みを作り、そこに自分の裁量で細かな要因を追加してそれぞれをさらに関連づけていけば汎用性のあるものになるでしょう。

 この授業では、ループ図という手法を使い、変化を引き起こしたであろう要素同士を矢印で結び、その図を元にどのようなシステムで変化が起こったのかを把握し、最も有効な解決策を導くという訓練をしました。
(ループ図について詳しく知りたい方は、こちらで飯田さんが執筆されています。)

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