インタビュアー:2014年度生 堀 啓子
2016年度生 井奥 智大
インタビュアー・写真撮影:2015年度生 小林 勇輝
インタビュイー:2015年度生 渡辺 海

 大阪大学超域イノベーション博士課程プログラム履修生に、学生視点からインタビューする超域人。Vol.22の今回は、理学研究科物理学専攻で場の量子論を研究する渡辺 海君(超域2015年度生)にインタビューを行いました。あまり身近でない物理学を専攻する渡辺君、大学や社会、そして超域をどう捉え、何を自身の軸としているのか。インタビューに甚平で現れ、ふだんから周囲に“自由人”と呼ばれる渡辺君の本音に迫りました。

取材日 2016年5月20日

■ 300年先を見据えた物理学を探求する

インタビュアー堀:なかなか風情のある格好してるね(笑)。なんで甚平なの?

渡辺:ただ暑いからです。

:そっか(笑)。その格好で研究もしてるの?専門はなんだっけ?

渡辺:そうです。理学研究科の物理学専攻で、「場の量子論」っていう量子力学よりさらに一歩上のステップの分野の研究をしてます。場の量子論ってのは、無限個の粒子が生成したり消滅したりという、粒子の数は一定じゃないっていう概念を取り入れた理論なんですね。原子核を構成する粒子のうち、陽子とか中性子自体はこれまで量子力学の理論で記述されてきたものなんですけど、陽子や中性子を作っている更に小さい粒子の挙動は場の量子論の理論で記述されてるんです。その二つの理論に乖離があるので、その溝を埋める研究をしてます。

:うーんなるほど。その二つの理論をきちんとつなげることを目指してるってことか。

渡辺:そうです。ノーベル賞受賞者の湯川秀樹が作った、陽子と中性子の間に働くポテンシャルという力の概念を利用して、場の量子論から陽子と中性子の理論に必要なポテンシャルを導くという研究が日本ではよくなされていて、成功しているんです。日本ではその湯川さんの流れを汲んだ研究者が多くて、自分自身もこの分野を進めたいし、日本の物理学者の多くがそう望んでいるとも言えます。

:この分野の研究の、どういうところに面白さを感じるの?身近なものに直結した研究ではないような気がするけど。

渡辺:原子核の話は長い目で見れば色んな分野に応用ができて、例えば宇宙空間に存在するニュートリノという粒子の反応を見るとか、そういう宇宙や粒子探索のようなものを視野に入れて研究しています。だから身近な技術に関わってくるのは200年や300年先の話なんじゃないですかね(笑)。

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