Texted BY:13年度生 工学研究科 岩浅 達哉

 今回は、自分の専門研究は工学であるにもかかわらず、全く別分野である学会、「第42回日本生活学会」の研究発表大会(2015年5月23〜24日開催)に登壇した工学研究科 環境・エネルギー工学専攻D1、超域2013年度生の高田 一輝さんにインタビューしました。

 

1. 学会参加のきっかけ

今回はどのような学会に参加したのでしょうか?

日本生活学会という学会です。民俗学を研究している人、建築士の人、工学系の人、人間科学の人など、さまざまな分野の人がいろんな視点から「人の生活」について語る、そんな学会でした。ぼくがおもしろいと感じた発表のなかでは、ストリートダンスを分析した発表もありましたね。笑

その学会に出ようと思ったきっかけは?
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日本生活学会に所属している大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)の森栗茂一先生と一緒に毎年CSCDの授業でお遍路に行っているのですが、たまたまお風呂に入っているときに、超域のフィールドスタディで行ったパラオの話をしたんです。具体的にはパラオの下水処理場を見学した時の話をしました。パラオでは日本ではあまり見ない散水濾床法という方式で下水処理していて、コバエや臭いが発生していました。パラオの下水インフラ全体は戦後アメリカの援助で作られたもので、ぼくが見た処理場は台湾の援助でさらに改修されたものだったそうです。そのような話をしたら、「パラオの下水処理か、とても興味深いね。『日本生活学会』という学会に出てみないか?」って声を掛けられました。フィールドスタディではパラオの生活を見てきましたので、少しは話せるかなと思ってお誘いを引き受けて学会に出てみようと思いました。

2. パラオの下水処理について語る

学会ではどのような内容を発表したのでしょうか?
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パラオはどういう国か、パラオの下水道整備の歴史、フィールドスタディで実際に見てきたパラオの下水処理の現状などを発表しました。特に、最近はパラオの下水処理場も先進国の支援を受けて改善されつつあるというような話はなかなか聞く機会がないようで、興味を持ってもらえました。ぼくの専門は下水処理で、「下水道研究発表会」、「水処理生物学会」といった下水道や生物学に特化した学会で研究成果を発表することが多いです。そのような場所では下水処理の方法や微生物を培養する方法など、「なんとか方式」って、いわゆる専門用語を言ったら理解が得られます。でも、今回の学会ではそのような前提がないので、そこに気をつけて話しました。専門分野の学会では、下水処理技術などの話が中心ですが、今回の日本生活学会では「人の生活」について述べるというのも、いつもと違う点ですね。

どんな質問やコメントをもらいましたか?

「今後、日本はパラオに対してどのような支援を行うべきか」という質問を受けて、少しディスカッションしました。海外から行われている支援の例としては、下水処理設備・インフラの支援などが挙げられるのですが、支援を受けて導入されたすべての下水技術が有効に活用されているわけではありません。これは、技術をちゃんと使える人がいないということが一因で、日本が今後行っていくべき支援は人材育成等の人的支援ではないかと、ぼくは思っています。

また、現地の人たちは「工場がなければ、水は汚染しない」と思っており、工場があまりないパラオでは、自分たちも環境汚染者になりうるという当事者意識がほとんどない。そのため、下水処理インフラの必要性もそこまで感じていなかったりします。そういった意識にも向き合っていく必要がありそうです。

他には、「今、パラオの人が経験していることは日本人が過去に経験してきたこともある。パラオの生活を全く別物として捉えるのではなく、近い部分もあるなと思って見直してみてもいいかもしれませんね。」というようなコメントもありました。

自分の専門分野の学会とはどのように違いましたか?

専門分野では下水処理の方法や微生物を使う方法など自分の立てた仮説や考察に対して、ディスカッションが行われて、今後進めていくべき方向性などを議論します。それに対して、今回の学会では先ほどの「今後、日本はパラオに対してどのような支援を行うべきか」という質問のような、全く専門外の話で自分の専門の学会では聞かれることがない質問がありました。そういう予想外の質問が出てくるのは、いつもの学会と着眼点が違って新鮮で面白いところだと思います。

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3. 一つのことだけしなさいっていうのが我慢できない

そもそも高田さんはどんなことに興味があるんですか?

普段のフィールドが日本の都市部の下水なのですが、そことは違う、海外の下水や日本の地方、例えば離島の下水はどうなっているのかとかにも、最近興味が出てきたりしています。また、地方に行くと過疎地の実態が見えてきて、日本の田舎の暮らしにも興味を持ったりしています。

学会を勧めてくれた森栗先生と出会った、お遍路に加わったきっかけはなんですか?
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学部生のころから、普段と違う環境に身を置きたくて、自分の専門ではないCSCDの授業を結構取っていたんです。それの一つにお遍路の授業があって、楽しかったので5年連続ぐらい受講しています。
 そもそも、全体から一部を選択して、選んだそれだけしていたらいいよという環境が我慢できないんです。例えば、ずいぶん昔の話ですけど、高校で文理に分けられるときって、理系は理系の勉強をしなさい、文系の勉強はしなくていいよ、みたいになるじゃないですか。あれも好きじゃなかったなあ。そういう限られたことではなく、いろんなことを知りたいです。だから、超域イノベーション博士課程プログラムみたいな授業スタイルが好きですね。いろんな分野のことを1モジュール(5回授業)で学べるのはいいです。

4. 将来のキャリアプラン

将来はどのようなことをしたいと考えていますか?

将来は、環境技術の研究を行っている研究所で研究がしたいです。でも先ほども述べたように、一つのことしかできないのは好きじゃないですね。これしかやったらだめとか言われるところとか。もちろん最初は、できることも少ないし任される内容も少ないかもしれないです。でも、いずれは大規模なプロジェクトに携われるようになりたいし、自分ができることや知っている領域も拡大させていきたいです。

本日はインタビューを受けていただき、ありがとうございました。今回のインタビューでは、高田さんが専門分野外の学会に登壇した話から始まり、高田さんの興味や視野の広さを実感できるお話を聞くことができました。